オールドヴァイオリン(フランス)Atelier Caussin (クサン工房製) ca.1870
おはようございます!
オールドヴァイオリン専門店
㈱ダ・ヴィンチヴァイオリン
代表の山口保行です。
クサン工房製(Atelier Causssin)のオールドヴァイオリン2本目です。
1本目の記事は こちら から
クサン工房は1800年中ごろから終わりまでフランスのNeufchateau(ヌシャトー)で弦楽器の製作をしていました。クサン(工房)の特徴は「オールド仕上げ」(主にイタリアンオールドコピー)でしたね。今回紹介するヴァイオリンは1本目の楽器と比べると楽器の作り、ニスの処理がよりクサン工房的な仕上げになってます。ではご覧ください。
中心部を見てみましょう。
1本目と比べると横幅が狭くなり、「ふくらみ」が中心が盛り上がったアマティ型でクサン工房っぽさを出してます。こちらのf字孔もとてもスッキリとカットされてます。こちらの表板は2枚です。
横から見るとふくらみがある分、f字孔の段差も大きいですね。
テストーレ風な手書きのパフリングです。手書きパフリングについては昨日の記事も参考にしてもらえたら嬉しいです。
ニスの処理がクサン工房的ですね。傷がたくさんあるように見えますが、これはほぼ全部が「わざと」やっています。でも割れが一切なくて状態はとても良いです。
弊社で継ぎネック、指板も新調しました。
糸巻きも穴埋めして色の濃い柘植(つげ)の新しいペグ(1本目とは違う形です)を入れました。
スクロールです。
こちらもクサン工房的な素朴な作りです。
裏の「剥げ」もあって良い感じ。これはわざとというよりも楽器を置いた時と調弦による「自然な減り」かと思います。僕はこういう「減り」のあるスクロールが大好きです!
せっかくなので写真集「Four Centuries of Violin Maiking」でCarlo Antonio Testore(カルロ・アントニオ・テストーレ)のスクロールと比較してみましょう(P587)。まあまあ似てるでしょう?
低音側も見てみましょう。「ふくらみ」がいい感じの盛り上がり。素敵!
こういうふくらみに慣れてくると新作には戻れなくなってしまいます。横板のニスも表・裏板と同じように処理されていますね。
部品を見てみましょう。
こちらのテールピース・あご当てはペグに合わせて色の濃い柘植(つげ)にしました。昨日の楽器と雰囲気が大分違うでしょう?これも楽器によって雰囲気を変えています。1本目とヴァイオリンの形(作り)やニスの色が違うのだから、同じパーツにしたら可哀想です。個性を生かさなきゃです。
良く見たら、あご当てはドイツ製(右側に押印が見えます)でしたね。
では楽しみな裏板を見てみましょう。
実物は迫力あるんだけどなあ~。私の撮影技術(素人)と伝わりにくいですね(泣)。スミマセン。
裏板は2枚板です。左右で色が違う(右側が濃い色)ように見えませんか?誤解される方も多いのですが、これは見る角度によって木目の影響で影のように写ってしまうためです。別の角度で見ますと左側が濃く見えます。また2枚板ですから板を張り付けてある中心線もはっきり見えてしまってますね。これも同様なので、次の写真を見ていただくと中心線も、色の濃さも左右でそこまで大差ないのが分かります。
中心部分が結構ふくらんだアマティ風です。表板同様、作りやニスの処理がクサン工房的な仕上げで手間がかかっていますね。
コーナーをご覧ください。クサン工房製のヴァイオリンによくみかける手書きパフリングです。昨日もご覧いただきましたようにテストーレ風です。
楽器内部に貼ってあるラベルを見てみましょう。Antonius Stradivarius(ストラディヴァリ)と書いてありますが左側に「Model」(モデル)とありますのでストラディヴァリモデルなのでしょう。
でもよく見ると、
ラベルの下に「もう1枚」貼ってあるのが見えますか。わざわざ剥がしてみませんが、本当は剥がしたい!なぜわざわざ上に貼るんですかね、本当に。隠されると見たくなるこの思い、少しは分かっていただけますか。本当は気になって仕方ないです。想像するしかないのですが下にはきっとCaussinラベルか別のイタリアンラベルが貼ってあるかもしれませんね。そんなことを想像するのもオールドヴァイオリンの楽しみです(と自分に言い聞かせます)。
このヴァイオリンもとても保存状態が良く、必要な修理や部品交換をしてありますので(継ぎネック、穴埋め他、すべての部品交換を普通に工房に依頼しますと20万円くらいかかりますよ)安心してお使いいただけると思います。
こちらのヴァイオリンも工房製なので値段も比較的手ごろです。オールドヴァイオリンの雰囲気もあるし初心者の方におススメです。「工房製」とはいえ雰囲気があってとてもおススメのヴァイオリンです。状態の良いフランス・クサン工房のヴァイオリンはありそうでなかなか無いんですよ。お早めにご連絡くださいね。
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