Italian Old violin,Milano school(イタリアンオールドヴァイオリン・ミラノ派) ca.1880
おはようございます!
オールドヴァイオリン専門店
㈱ダ・ヴィンチヴァイオリン
代表の山口保行です。
フランスが続きましたが、本日は入荷したイタリアンオールドヴァイオリンを紹介します。
多くの演奏家たちはアマティ、ストラディヴァリ、ガルネリ、などイタリアンオールドヴァイオリンへの憧れがあります。現在の貨幣価値で数千万円以上、ストラディヴァリは最低でも数億円必要になります。ちょっと頑張って買おうかなという金額ではないですよね。
そこまでの名器になると実際に見ることは出来ても自ら手に取って音を出すことも難しいかもしれません。逆に手に出来たらとても素晴らしい経験になると思います。
本日紹介しますのは、頑張れば手に届けそうなイタリアンオールドヴァイオリンを紹介します。1760~1770年代にミラノで製作されたヴァイオリンです。
Milano school(スクール)とあるのはミラノの「学校」で学んだ製作者のような意味にも取れますね。実際はもう少し広い意味で、地域や人をまとめた「系列」という感じです。ここではミラノで製作された楽器に「非常に似たような特徴を持っている」ため、誰かは特定できないが「当時のイタリア人製作者によって(ミラノで製作された可能性もあり)ミラノ派の特徴を持ったヴァイオリン」と考えていただければ良いと思います。
ミラノ派の製作者というと、手書きパフリングのところで紹介したテストーレ(Testore)や、グランチーノ(Grancino)ランドルフィー(Landolfi)が有名です。
手に入りにくいですが「ヴァイオリンの系列 The Old Violin Makers」(昌子尚介著)という冊子でミラノ派の製作者を見てみましょう。
ミラノ派(スクール)の製作者です。上が師匠、下が弟子になります。
有名な制作者には一族・ファミリーで製作しているので詳細は下記をご覧ください。
Testore(テストーレ)一族
Grancino(グランチーノ)一族
Grancino(グランチーノ一族、上記と別の説)
ミラノ派で有名な制作者でもこれだけいるので、お弟子さんや見習いさんを入れるともっといらっしゃるはずです。
今日紹介しますヴァイオリンには作り、ニスにおいて、そのミラノ派の特徴(音ではありません)が見受けられるため、彼らから指導や影響を受けた可能性、もしくは工房で働いていた製作者による楽器だろうと考えられるのです。
では楽器の詳細をご覧ください。
まず中心部です。
オールドヴァイオリンらしい丸みのあるf字孔です。Carlo Ferdinando Landolfi 1751、Pietro Antonio Landolfi 1760、Carlo Antonio Testore 1758と雰囲気が似ています。
パフリングの作り・色、コーナーの丸みと相まって丸みのあるf字孔の形状はオールドらしい優しい印象に写りますね。
この後に続くモダンヴァイオリンはストラディヴァリやガルネリ(デル・ジェス)の影響でf字孔の両端の隙間が狭くなって鋭い印象になっていきます。
楽器を横から見てみましょう。
実物を見るとそれなりの「ふくらみ」はあるのですが、アマティ型・シュタイナー型と比較するとそれほどのふくらみではないです。ふくらみの始まりが「なだらか」「カーブがゆるい」のが影響しています。
ミラノの楽器にはアマティ型のようなふくらみのあるヴァイオリンもあるのですが、このような少し「なだらか」なふくらみを持っているのも1700年代ミラノ派の特徴の一つです。特にGrancino(グランチーノ)にはこういうふくらみのヴァイオリンがありますね。
表板の木目です。とても繊細です。
上部です。この部分は傷が多いヴァイオリンを良く見かけますが、本当にキレイです。大切に扱われたのでしょう。
低音側です。
この時代のネックであれば通常継ぎネック処理をしてありますが、この楽器はヘッド・ネックごと交換されています。
スクロールです。そこまで古さを感じないためみればすぐに分かりますが、これはヴァイオリン本体とは違う製作者によって製作されたヘッド・ネックで後世に取り付けられた物です。
スクロール正面。良い楽器ですのでかなり高価な、調弦しやすい糸巻きを取り付けてあります。
この楽器はイタリアンオールドヴァイオリンですが数千万円までしないのは、製作者が特定されていないことが一番の理由です。他にはこのスクロールが別の時代に製作されたものが付いていることです。2~300年オールドヴァイオリンの世界では良くあることですし、音には影響しませんので、そこを気にしなければ憧れのイタリアンオールドヴァイオリンがリーズナブルな価格で手に入ります。
横板です。
表板の縁を良く見ると板の中央が2つに分かれているのが分かりますか?これはハーフエッジという修理で薄くなった板の縁の補強です。これもオールドヴァイオリンにはよくある修理ですね。
部品を見ていきましょう。テールピースは黒檀です。楽器のスタイル的にこの形(フレンチスタイル)がとてもお似合いです。
あご当てはf字孔のように少し丸みを帯びた形にしました。雰囲気も大切なので木目のある黒檀(ローズではありません)にしました。
普段は気にすることもないと思いますがエンドピンも大切です。糸巻き、E線アジャスターと同じ金・黒檀の組み合わせです。細かいですが、こういう所にもこだわってます。
表板のコーナーです。丸みがあります。パフリングも手作り感がありますし、縁との距離が狭く、表板の木目や汚れと相まってとっても「オールドらしさ」を感じます。
それでは裏板を見てみましょう。
とても状態は良いです。表板同様、カーブがなだらかで極端なふくらみは感じません。
少し木目も出ていますね。ギラギラしていないのもオールドらしいです。
裏板のコーナーです。表板同様、「縁の盛り上がり」が比較的平らです。ここにも特徴が表れていますね。
ボタン部分です。割れの具合によってボタンごと交換することも多いし、見た目はキレイになるのですが、あえて裏から補強してオリジナルボタンを残しました。当然内部のブロック(ネック補強部品)も新しく交換して強度を高めてありますので安心してお使いいただけます。
普段は表に出さないのですが、ランパル氏の鑑定書を載せておきます。イタリアンオールドヴァイオリンだと自信を思って仕入れましたが、この業界は「怪しまれる」ことも多いので仕入れて修理が終わってから日本人なら安心できる鑑定家に鑑定してもらい発行してもらいました。
この楽器はMilano School(ミラノ派) と鑑定されましたが、そもそもイタリアンオールドヴァイオリンはオールドヴァイオリン全体から見ますと数は非常に少ない(希少)のです。
製作者が誰か特定できない「スクールの楽器」だからと言って「否定」する方もいらっしゃいますが、プロのディーラーからするとそれはとても狭い見方ですし、一所懸命製作したそのヴァイオリン(製作者)に失礼ですし、個人的にはとても悲しいです(ストラディヴァリだってクレモナスクールです)。
実際の鑑定作業というのは一瞬で製作者を特定できる分かりやすい楽器から非常に微妙な判断とならざるを得ない楽器まで幅広く、複雑な作業と本物を見続け、多くの楽器を深く洞察した長い経験と思い切った決断(判定)が必要になります。
鑑定書ではありませんが、オールドヴァイオリンや弓の「写真集」に載せてある楽器は、「製作者を特定するための特徴が分かりやすい」もので実際は「写真集に載せることが出来なかった微妙な楽器・弓の方が多い」のです。責任を持って世に発行する写真集として厳密に精査し自信のある物だけ載せてあるのです。「骨董品」であるオールド(ヴァイオリン・弓)の鑑定となりますと、そのような事実を知っておくことはとても大切です。
お客様への安心料とは言え、鑑定結果がやはりイタリアンオールドヴァイオリンであったため鑑定料はとても高額になってしまいました。販売金額はその分上がってしまいます。しかし数千万円は無理だけれど、このようにスクールの楽器であれば1700年代のイタリアンオールドヴァイオリンが手に入る可能性が高くなりますので是非選択肢の1本としてご検討いただければと思います。
このヴァイオリンは十分に整備されていますし、弾いていただければそのパワフルなソリスティックな音に感激すると思います。実はパワフルな音を要求する音大生やコンクール入賞を目指している方々は、クレモナのヴァイオリンよりも、音量のあるミラノ派のヴァイオリンを使用している方が多いですね。
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